- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章 ケルト模様の教え
- 第六章 追ってきたチェゲッテ
- 第七章 悪魔の橋で悪魔に会う
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
しばらく歩くと案の定、風が強くなり、雨も激しくなってきた。
そのうえ、この時期なのにとても寒い。 目の前には、そんな伝説を持つ悪魔の橋が見えてきた。 いつもなら上の車道には、たくさんの車が走っているのに、なぜか今朝は一台も見えない。
この地は、「悪魔の橋」の伝説のほかに、ロシアのスヴォーロフ元帥が一戦を交えた場所としても、よく知られている。
時はフランス革命戦争が進行する1799年、スイス連合軍に参加していたロシアのアレクサンドル・スヴォーロフ元帥が、この峠で、侵攻するフランス軍と交戦し、激戦の末、見事に後退させた、という。
そしてこの後、スヴォーロフ元帥率いる師団は、この悪魔の橋を渡り、アルトドルフへと向かったのだ。
伝説にある悪魔の橋は、いまは建て替えられて、新しい橋がかかっているが、ループのようになったゲッシュネンへ行くハイキングコースの脇には、小さなレストランがある。 また、その近くの岩壁には、このスヴォーロフ元帥がアルプス越えをした記念の碑も彫られている。
美佐子は悪魔の橋と、その側の橋に電車が走る写真を撮りたいと、ずっと待機していたのだが、いくら待っても電車は通らない。
時刻表で見ると、もうとっくに通過してもよい時間だった。
カメラを持つ手が凍りそうに冷たくなってきた。 と、思ったら、いつの間にか雨はみぞれに変わり、やがて雪に変わった。 そして、吹き溜まりとなる場所には、すでに雪がかなり積もり、白くなっていた。
ハイキング道は、昨夜来の豪雨と風によるためだろう、いたるところに倒木があり、道をふさいでいる場所があった。 また目もくらむような峡谷を、恐々と覗けば、岩をも押し流す勢いで、激流が流れている。
こんな日なので、美佐子以外にハイカーはいなかった。 冗談でも、悪魔の橋で、悪魔が出てきたら大変と、写真を撮るのはやめて先を急いだ。