- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章 ケルト模様の教え
- 第六章 追ってきたチェゲッテ
- 第七章 悪魔の橋で悪魔に会う
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
朝起きると、雨は小降りになっていた。
しかし、お天気の方は相変わらず悪く、山の上の方は厚い雨雲で覆われている。 このお天気では高い山は無理なので、今日は近間を散策することに決めた。 美佐子は、ここから隣村のゲッシュネンまでは歩いて1時間くらいだから、荷物はホテルに預かってもらい、村までピストンしてこよう、とホテルを出た。
雨の中を歩くのは、今回の旅では今日が初めてだった。 用心のため、普段から持っている雨合羽を着たうえ、ホテルで借りた派手なネーム入りの大きな雨傘も持っていくことにした。
アンデルマットの駅を通り過ぎると、右側に大きな軍隊の駐屯地がある。そして、さらに進むと古い教会があり、その先から少し山道に入るのであるが、今日は雨なので、シェルターのかかる車道沿いの歩道を下っていく。
ここは両側が鋭く切り立った岩で囲まれ、谷底にはロイス川が流れるスイスでも、名にし負うシェレネンの峡谷だ。 風の恰好の通り道になるため、突風が吹き抜け、冬には積もる雪さえ、瞬く間に吹き飛ばされる。
また強い雨が降ったり、雪解けの時期になると、全ての水がこの峡谷に流れ込み、川は増水し、大きな岩や、石の橋まで押し流す。
そんな厳しい場所だから、ここには当然ながら伝説が生まれ出た。
~ 昔のこと、この急峻な谷と激流のロイス川を渡るのが難しかったため、村人たちが悪魔に頼んで、ここに橋を架けてもらおう、ということになった。
すると、本当に悪魔が現れて、願いは聞くが、橋を最初に渡る者を生け贄に差し出すよう要求してきた、という。
村人たちは、その要求をのんだが、いざ橋が出来上がると、彼らはヤギを先に渡らせ、生け贄は出さなかった。 約束違反に怒った悪魔は、大きな岩をつかんで橋を壊そうとしたが、そこへ老婆が現れ、その岩に十字(架)を描くと、悪魔は岩を置いたまま逃げ出した。 という。 ~
車が通るトンネルの入口には、赤で悪魔と戦うヤギの絵が描かれている。