- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章 ケルト模様の教え
- 第六章 追ってきたチェゲッテ
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
怖くなった美佐子は一目散に逃げ出したが、相手の足の方が数段も早く、すぐに追いつかれた。そして恐る恐るその顔を見ると、男は、さっき寄った習俗博物館のおじさんだった。
美佐子が博物館に預けたストックを、忘れたまま帰ってしまったので、わざわざ追いかけて届けてくれたのだ。
美佐子はおじさんに、丁寧にお礼を言い、その先のベッテンからバスに乗ってホテルに戻った。そして久々にレストランでゆっくり夕食をとった。
このホテルは非常に家族的で、食事のとき、オーナーが話しかけてきた。
美佐子は、稀少ランが今年も元気に育っていたこと、博物館でストックを忘れたら、わざわざ追いかけて届けてくれたこと、など、今日あったことをいろいろ話すと、「この村の人たちは皆、純朴で、とても親切なんだよ。この村を気に入ってくれて、とても嬉しい。ぜひまたきてください」 といった。美佐子は、明日はどこへ行こうかと思案していたので、オーナーに「明日のお天気はどうですか?」と聞くと、「明日は昼ごろまではもつが、低気圧が急速に張り出してきているから、夜半からは、山は大荒れになる予報だ」と教えてくれた。
初めの計画では、お天気さえよければ、明日はヴィラーから峠を越えてカンデルシュテークへ抜けようと思っていた。しかし、峠付近は大きな岩がゴロゴロした道で、雨と、ガスにまかれるとコースが全く分からなくなる。それで予定を変更して、友人がいるアンデルマットへ行くことにした。
朝起きると、雨は降っていなかったが、空はどんよりと曇っていた。どうやら昨晩オーナーに聞いた通り、お天気は下り坂のようだ。
美佐子は朝食を食べると、すぐバスでゴッペンシュタイン駅へ向かった。
そしてブリークで乗り換え、氷河急行が走る路線を、のんびり鈍行でアンデルマットへと向かった。 この路線はスイスの中でも、特に景色が美しいことでも有名だ。それに氷河急行は予約が必要だが、鈍行はフリー。見える景色は同じだから、移動時、美佐子はいつもこれを利用している。