- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章 ケルト模様の教え
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
美佐子は、このグループのリーダーと、お医者さんにお礼をいった。
ヌシャーテルで、スイスの歴史案内のボランティアをしているというこのグループは、この博物館にはよく来るので、自分の家の庭のようだ、という。
元気になった美佐子に向かって、「いま、ここでMisakoの大好きな “ケルト人と装身具” という展示をやっている。 よかったら、博物館の中を案内してあげるから、見ていかないか?」 といった。
ここでは常設展示のほかに、ときどき歴史が好きな人にとっては、たまらなく魅力のある特別展が開催される。
それで今回、美佐子も旅の帰りに、ここにぜひ寄ろうと思っていたところであった。それにグループのひとりが英語で説明をしてくれるというので、こんなよいチャンスは二度とない、と思い案内をお願いした。
館内に入ると、日本と同じように先史時代の土器や斧、ヒジリ、狩猟器具、それに食物としていたと思われる植物の種などの展示があった。
またBC数千年頃の人骨が、この近くの湖畔で発掘され、石棺の中に納められている様子を如実に見せる展示もある。
太古に、このヌシャーテル湖やビール湖には湖畔集落があり、考古学者の研究などにより、当時の水上生活が次々と明かされてきている。
そして、美しいケルト模様の装身具などを見るにつけ、石器時代、青銅器時代、鉄器時代前期を経て、ここに見事に華開いたケルト人によるラ・テーヌ文化の素晴らしさに、改めて驚かされる。
さらに歩を進めると、ちょっと怖いようなケルト人の頭部や、有名な謎に包まれた背丈ほどある石の像 (Bevaix Treytel) などが見られる。
その側の説明パネルには、仏語と独語で 《私はだれか? 人か? 神か? 》 と書いてある。
《 Qui suis-je? homme ou dieu? 》《 Bin ich Gott oder Mensch? 》
遺跡を見ていると、時の経つのも忘れ、遠い昔に思いを馳せてしまう。
そのときショーケースのガラスに、キラリと光る黒いサングラスが映った。