スイスの写真

< 目 次 >

第一章 謎の携帯メール   文頭へ戻る >> 
第二章 紙片と数字2515
第三章 不気味な第二のメール
第四章 カタコンベの秘宝
第五章 ケルト模様の教え
第六章 
第七章 
第八章 
*本文はフィクションで、実在とは関係ありません。

第四章 カタコンベの秘宝
5

ガイドは秘宝が保存されていた小部屋の鍵をかけ、今度はカタコンベの方へ移動し、案内してくれた。入口は大きな地下水道のようになっており、ところどころに蛍光灯がつけられてはいるものの、中は薄暗い。
足元には冷たそうな水が流れている。ガイドは、この水はダン・デュ・ミディから流れ込んでいるということと、昔の事故について説明してくれた。
そして、目がだんだんと慣れてくるにつれ、ぼんやりした明かりに照らされて、石積みして造られた墓穴跡が、ひとつ、ふたつ、と見えてきた。
いまは大勢で歩いているから、あまりそんな気がしないのであるが、お墓の跡だと思うと、やはりなんとなく薄気味悪い。
それに、足元がじめじめしているので滑りやすいし、マンホールの蓋が割れたような不気味な竪穴がいくつもあいているので、気をつけないと、危うく穴の中に落ちそうになる。
ガイドは迷路のようになったカタコンベの中を、右に、左に自在に曲がり、そして階段で上に下へ、と縦横に案内してくれる。
すると突然、どこからともなくエコーのきいた声が聞こえてきた。そして、それに続いて修道院の説明と、お祈りが始まった。階段の上の方で、この修道院の神父さんが説教をしていたのだった。
やがて、やや広くなった場所に出ると、素掘りの岩の壁に、カタコンベ全体の構造や修復状況を説明するパネルが、何枚か貼ってあった。断崖にへばりつくように建てられたこの修道院全体の写真、カタコンベの平面図など、美佐子には、どれも大変興味深いものだった。
一番後ろを歩いていた美佐子は、グループの人たちが隣のパネルに移動するのを待って、その前に出た。そして図をよく見ると、カタコンベは蟻の巣のように複雑に繋がっていた。後でじっくり見ようと、写真も数枚撮った。
そのとき、遠くでバタンと、扉が閉まる音がした。観光客たちは皆、ガイドと一緒に次の部屋へ移動してしまったのだ。美佐子は急いでその後を追ったが、「あっ、」 という叫けび声とともに、穴の中へ滑り落ちてしまった。