スイスの写真

< 目 次 >
  • 第一章 謎の携帯メール
  • 第二章 紙片と数字2515
  • 第三章 不気味な第二のメール
  • 第四章 カタコンベの秘宝
  • 第五章 
  • 第六章 
  • 第七章 
  • 第八章 

本文はフィクションで実在とは無関係です。

第四章 カタコンベの秘宝
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美佐子はこのホテルを基点にして、シャンペリーから、鋸の歯のように見える美しい山 「ダン・デュ・ミディ」 などに、よく登っていた。「ダン・デュ・ミディ」 は晴れていればエーグル駅のホームからも良く見える。6月末ころにスイスへ来ると、美佐子の友人はこの山の積雪状況で、ディアブルレやレザンあたりの山の雪の状況を推測している、という。
雪が多くて高山に登れないと困るし、瑞々しい高山植物の写真を撮るには、まだ山にかなり雪が残っていなければいけないし、ちょうど良い時期に訪ねるのは非常に難しいからだ。また、この山はレマン湖で遊覧船に乗り、湖上の方からシオン城を見ると、その後ろに聳える美しい山でもある。
サンモーリスはそのダン・デュ・ミディの山裾にある村だ。
美佐子はインターラーケン、次いでシュピーツで乗り換え、ブリークへと向かった。そしてそこで、さらに乗り換えてマルティニの駅で電車を降りた。
先に、駅前からすぐそばにあるホテルに寄り、宿を予約すると、荷物だけ預けてその足で、すぐサン・モーリスへ向かった。
ホームへ行くと、ちょうどよい具合に、電車が来た。マルティニからサン・モーリスまでは電車で10分程度であった。
駅前へ出ると、すぐ左手には聖ジグスムント教会がある。そして左に折れればサン・モーリス修道院がある。不審な紙片やメールには、ただ、「サン・モーリスへ行け!」 と書いてあっただけで、サン・モーリスのどこへ行け、とは何も書いてなかった。
美佐子はどこへ行ってよいか分からなかったので、とりあえず最初に、この辺りで一番有名なサン・モーリス修道院に行ってみよう、と思った。
この修道院には前に一度来たことがあった。そのときは、もう時間が遅かったので、外から見るだけで中に入らなかったが、この修道院建立の歴史をひもとくと、いかに古いものかがよく分かる。
美佐子が正面の入口から中へ入ろうとすると、背後から、フランス語で 「パルドン! マドモアゼル」 と、男が声をかけてきた。