- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
美佐子は、初め、サン・モーリスでなく、サン・モリッツのことだと思った。というのも、サン・モーリスなんて本当に小さな村だし、ましてや日本人がよく行く観光地でもなかったからだ。
しかし、よく見ると、カタカナの隣に横文字での名前が併記されており、そこには確かに、 「St.Moritz」 ではなく、「St.Maurice」 と書いてあった。
サン・モリッツならこれまで何度も行っているので、行き方や、所要時間もよく分かっていたが、サン・モーリスへは、ここからどのくらい時間がかかるのだろうか、と、ちょっと考えた。
グリンデルワルト駅で、駅員に 「St.Maurice」 と書かれた紙片を見せて、「ここへ行きたい」 というと、すぐにタイムテーブルを打ち出してくれた。それによると、グリンデルワルトからサン・モーリスまでは、4回乗り換えて、3時間くらいかかることが分かった。
「よし、それじゃぁ、ともかく、インターラーケンまで下りよう 」
美佐子はスイスへ行くときはいつも、インターネットでSBB(スイス国鉄)の時刻表を打ち出して持ってくるのだが、生憎、今回は、このルートは最初の予定にはなかったので持ってきていない。
ただ、いつも、急に行き先を変えることがままあるので、トーマスクック時刻表の、スイスとオーストリアの部分だけを、本から切り取って持ってくることにしている。
こんなときは、最近流行のネットブックでも持ってくれば、よいのだろうが、普段、会社でパソコンを使用することが多い美佐子は、スイスへやって来てまで、とてもパソコンをやる気になれなかった。
サン・モーリスは、マルティニから電車で10分ほどレマン湖の方向へ行ったところにある。
それに、マルティニならこれまで何度も通ったことがあるし、そこで2~3度泊まったこともあった。
そうだ、今晩はあそこに泊まろう、と、駅前から2分ほど歩いたところにある、いつものホテル・フォルクラ・ツーリングに宿を取ることにした。