- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
リフォームが終わり、新築のようにきれいになったホテル・シュヴァイツァーホフの前の通りを、美佐子は気重に、俯いて歩いていた。
そしてホテルの前の緩い坂のところまで来ると、急に駐車場から飛び出してきた赤い車に、危うくぶつかりそうになった。
「いけない、しっかりしなければ」 と、気をとりなおし、つくり笑いをしながらフロントの方へ向かった。 そしてキーをもらい、部屋に戻ろうとすると、フロントの女性が、「Misakoさん、メッセージ for you.」 といって、白い封筒を渡した。
封筒には、封がされていなかった。
開いてみると、また、 「すぐに、サン・モーリスヘ行け」 と書いてあった。 そして、続けてフロントの女性がいった。
「さっき、Misakoの友達という女性が来て、Misakoが帰ってきたら、これを渡してほしい」 とだけ告げて、駐車場に停めてあった赤い車に乗って、いそいそと帰っていった、・・・と。
美佐子の部屋は3階で、アイガーが目の前に見えるマウンテン・ビューの素敵な部屋だった。ボタンを押してエレベーターが来るのを待っていると、ハイキングの格好をした若い3人組が、楽しそうに上から降りてきた。
このホテルは結構、日本人旅行者が泊まっている。 オーナー夫妻が大の日本ファンであるうえに、夏のシーズンには某旅行会社が現地相談窓口を開設し、日本人スタッフが常駐しているからだ。
楽しそうな彼女たちの姿を見ていると、美佐子は、もういい加減にいやになってきた。 こんな変なことがなければ、自分も今頃は山に登り、たくさんの美しい高山植物が見られただろうに、・・・と。
美佐子は仕方なく、残りの2泊分をキャンセルして、サン・モーリスに行ってみようと思った。 キャリーを引いて再び駅前までくると、まだかなりの観光客がいた。 いろとりどりのシャツを着て、ザックを背負って、みんなとても楽しそうだった。 それをうらやましく見ながら、ひとり電車に乗った。