- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章 カタコンベの秘宝
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
朝のグリンデルワルト駅は旅行会社のツアー客で賑わっていた。
美佐子はその人ごみをすり抜けるようにして、駅舎に入り、荷物預かり所の係員を呼んだ。 しかし、忙しいのか、なかなか出てこない。
中を覗くと、荷物置き場の隅の方に美佐子のスーツケースが見えた。
「あぁ、ちゃんと届いている」 と、安心し、もう一度大きな声で 「すみませ~ん」 と、係員を呼んだ。
やっと出てきた駅員に、託送荷物受領用の半券を渡すと、すぐスーツケースを持ってきてくれた。
美佐子は念のために、壊れたり、傷ついたところがないか、上から、横から見て確認した。 すると取っ手のところに、見覚えのない赤い荷札のようなものが結ばれていた。
よく見ると、そこには赤いマジックで 「96」 と書かれていた。 美佐子は自分でつけた記憶がないので、「これはなんですか?」 と、中へ戻ろうとする駅員に聞いてみた。
駅員は面倒くさそうに、「5分くらい前に、サングラスを掛けた女の人がやって来て・・」 そして、「私のスーツケース、もう届いていますか?」 「届いていたら、いまちょっと半券を持ってくるのを忘れてしまいましたが・・」 「あとで妹が取りにきますから、分かりやすいように、この荷札を取っ手のところにつけておいてください」 といって、立ち去った、と、いった。
美佐子は、「あ~ぁ、また、あの女が現れたのか!」 と憂鬱になった。
そして、荷札をはずして、ポケットにしまい、力なくスーツケースを引いてホテルの方向に歩いていった。
朝の柔らかい光が、だんだんと村の方に下りてきて、陽の当たり始めた美しい山の斜面には、クライネシャイデック行きの電車がゆっくりと上っていった。
今朝、目が覚めて美佐子の心の中にあった、朝のすがすがしい気分は、また紙切れ一枚で、一瞬にして吹き飛んでしまった。