- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
真っ直ぐに歩くということが、こんなに難しいとは思わなかった。
あっちへよろよろ、こっちへよろよろ。 成田空港を発ってから、ずっと座ったままだったのと、暗闇の中だから余計に歩きにくかった。
美佐子が椅子の端に手を掛けながら、後ろの方へ歩き始めると、サングラスを掛けた男の頭が、微かに動くのが見えた。
さらにそこから3~4列後ろへ下がっただろうか? 真ん中の座席は4人掛けから、3人掛けに変わった。
美佐子はメールに書かれていた通りに、一番後部の座席の右端に腰をかけた。 そして手を伸ばし、機内誌をとった。 この航空会社の機内誌には、スイスの代表的な花の名前がついていた。
表紙から順にパラパラとめくってみたが、特に変わった様子はなかった。
最近は航空会社各社ともコスト削減の影響か、エコノミークラスには新聞や週刊誌などがあまり置かれていない。 長時間の飛行なので、読むものを持たないときなどには、機内誌も結構暇つぶしになるものだ。
この機内誌も、以前は結構面白い記事やコラムが掲載されていたが、最近は時計の宣伝のような内容ばかりで、あまり読むところがなく、とても残念な気がする。
その夏季号には、スイスとフランスの国境近くにある時計産業の中心地:ラ・ショー・ド・フォンについての紹介記事が載っていた。素敵な時計の写真がたくさん載っているが、どれも高価すぎて、とても美佐子には手が出せないものばかりであった。
なぁ~んだ、やっぱりメールはいたずらだったのか、と、ほっとして冊子を閉じようとしたとき、一枚の小さな紙切れが、はらっと、足元に落ちた。
美佐子は屈んで、すぐそれを拾い、紙切れに目を落とした。
“ 2515 ” そこには、2515という数字だけが書かれていた。
きっと前に座っていた人のメモか何かが出てきたのだろう、と思ったが、念のため、もう一度、始めから機内誌をよく見てみようと思った。