- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。
*夜の出現状況は実際と相違しています。
本文はフィクションで実在とは無関係です。
*夜の出現状況は実際と相違しています。
数分して機内のライトは、すぅ、すぅ、すぅっ、と、微かなずれをもって全てが消えた。 そしてそのタイミングと合わせるかのように、ひとつ、ふたつ、と細いスポットライトの光が暗闇に落ちた。
本を読む人、モニターで映画を見る人、ゲームを楽しむ人、ただ、その人たちの周りだけが薄ぼんやりと明るくなっている。
美佐子も明るい方が安心だと思い、ライトをつけた。 そして映画案内でも見てみようかと、前席の背にあるネットから小冊子を取り出そうと手を伸ばしたとき、何処とも分からぬ暗闇の向こうから、こちらをじっと監視しているような視線を感じた。
美佐子はできるだけ身体を動かさないようにして、目だけで辺りをうかがった。しかし、その視野には、薄気味悪い視線の出どころは入らなかった。
今度は思い切って立ち上がり、後ろを見た。暗闇に目が慣れてきたせいだろうか、ぼんやりと、人の輪郭だけは見える。
左から右へゆっくり見回すと、後方、中ほどの席に、真っ暗なのにサングラスを掛け、白いマスクをした男が座っていた。 そしてその男は美佐子と目が合いそうになると、そ知らぬふりして、さっと顔をそむけた。
さらに目を右に向けると、今度は鏡のようになった反対側の窓に、やはりサングラスを掛け、明らかに機内の様子をうかがっているような女の顔がぼんやりと映っていた。
美佐子は飛行機に乗ってから、ほとんど飲み食いしていなかったので、まだトイレに行きたいという気持ちにはならなかったが、立ち上がって後方を見遣ると、メールに書いてあった後部座席は、確かに今も空いていた。
機内にはたくさんの乗客が乗っていて、客室乗務員もいる。 何か起こればきっと誰かが助けてくれるだろう、美佐子はそう思い、思い切って後部座席に行ってみようと決心した。
そして通路を後ろに向かって歩き出すと、ふらふらっ、と左右に振れてしまい、慌てて座席の肩にある取っ手につかまり体勢を整えた。