- 第一章 謎の携帯メール
- 第二章 紙片と数字2515
- 第三章 不気味な第二のメール
- 第四章
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
本文はフィクションで実在とは無関係です。*夜の出現状況は実際と相違しています。
本文はフィクションで実在とは無関係です。*夜の出現状況は実際と相違しています。
その声で美佐子は、はっと我に返えり、“和食の方を” と、指差した。
しかし、食事にはほとんど手をつけず、ヨーグルトを三分の一ほど口にしただけだった。 とても食べるような気分にはならなかった。
旅慣れた人は早々と食事を済ませ、混雑する前にトイレに立った。
そして臨席の人もトイレに行きたいというので、美佐子は通路に出て道を空けた。 そのタイミングを利用して、恐る恐る後方を見やれば、確かに一番後ろの三人掛の席が三つとも空いていた。
メールの差出人は、なぜ、その座席が空いていることを知っていたのだろう? ひょっとして差出人は同じ機内に乗っているのだろうか?
美佐子はますます気味が悪くなってきた。
N'EXとチェックインカウターで一緒になったご夫婦は、きっと前の方に座っているのであろう、近くには見当たらなかった。
食事を終えた乗客は、ちょっと後ろを気遣うように座席を倒し、テレビモニターで映画を見たり、音楽を聴いたりしている。 美佐子はモニター画面をフライトインフォメーションにしたまま、飛行位置を確認しようと思った。 その一方で、だんだんと落ち着きを取り戻すにつれて、このメールは誰かのいたずらか、間違いメールなのではないか? とも思えてきた。
そして一旦そう思い始めると、朝からヒヤヒヤ、ドキドキし通しだった長い一日の疲れがどっと出て、美佐子はイヤホーンを着けたまま、すうっと、気を失うように深い眠りに落ちてしまった。
それからどのくらいの時間が経ったのだろうか? 目が覚めると、周りの乗客もほとんど眠っていた。お腹がいっぱいになると皆眠くなるのだろう。
目の前のモニターは相変わらず、英語とドイツ語で飛行速度と高度、現地時間、到着予測時間などを繰り返し伝えている。
そしてモニター画面が航路マップに変わったとき、飛行位置を知らせる小さなアニメの飛行機は、マップに暗い影が掛かった所に入ろうとしていた。
もうすぐ夜になるんだ。美佐子は忘れていたメールのことを思い出した。