スイスの写真

スイスの写真

< 目 次 >
  • 第一章 謎の携帯メール
  • 第二章 紙片と数字2515
  • 第三章 不気味な第二のメール
  • 第四章 
  • 第五章 
  • 第六章 
  • 第七章 
  • 第八章 

本文はフィクションで実在とは無関係です。

第一章 謎の携帯メール
3

美佐子がフライ&レイルの手続きをとっている間に、隣の列に並んでいた中年夫婦の手続きの方が早く終わり、
「悪いけど、先に行ってますよ」
と、美佐子に声をかけ、出発ゲートの方へ小走りに向かっていった。
 美佐子もボーディングパスと荷物受領用の半券をもらい、内容を確認すると、すぐその後を追うように手荷物検査へと向かった。 そしてボディチェック用のバーをくぐると、ビーっという警報が鳴り、係官は、履いていた 「登山靴を脱いで、もう一度くぐれ」 という。
 美佐子は、「選りに選って何でこんな急いでいるときに鳴るんだ!」 と、思わず叫びたくなった。結局、靴底に付いていた水分が反応したらしい。
たぶん、さっきトイレに行ったときに付いたものだろう。悪いことは何もしていないのに、あのバーをくぐるときはいつも不思議に心臓がドキドキする。
 時計を見ると既に10時を過ぎていた。動く歩道の上を急ぎ足で歩き、搭乗ゲートに向かうと、その途上で、“湯沢美佐子さま~、最終搭乗案内です。E-27番ゲートへお急ぎください。” というアナウンスが聞こえてきた。
 それを聞いて美佐子は逆に、“あぁ~、間に合った” と思った。
そして係員にトイレだけ行かせてもらい、一言 “お母さん、間に合ったよ、行ってくる~” と家にいる母に電話を入れた。
 家を出たときは土砂降りだった雨もすでに止み、青空が出始めた空に向かって飛行機がキーンという耳を劈くような金属音を残し、次々と飛び立っていく。
 今日は家を出たときからヒヤヒヤ、ドキドキのし通しで、なんとなく今回の旅では嫌なことが起こりそうな、悪い予感が美佐子の頭をかすめた。
 機内に入り、乗務員に案内され着席すると、すぐ、パソコン、携帯電話など、すべての電子機器のスイッチを切るよう、機内アナウンスが入った。
美佐子も慌てて電源を切ろうとすると、一通のメールが届いていた。
 件名はなく、返信(Re:)になっている・・・。