スイスの写真

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< 目 次 >
  • 第一章 謎の携帯メール
  • 第二章 紙片と数字2515
  • 第三章 不気味な第二のメール
  • 第四章 
  • 第五章 
  • 第六章 
  • 第七章 
  • 第八章 

本文はフィクションで実在とは無関係です。

第一章 謎の携帯メール
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さっきトイレから母に電話したときには、確かにメールには何も入っていなかった。それに美佐子は、着信メールにかなり賑やかなメロディーを設定しているので、気がつかないはずはない、と思った。 が・・・
 待てよ、あっ、そうか、あのときだ。 きっと飛行機の飛び立つ音がうるさくて聞こえなかったのだ。 美佐子はメールを開き、小刻みに指を動かすと、急ぎ電源を切った。
 美佐子の顔はみるみる血の気を失い、青ざめていった。
もしこれが、これから離陸をしようと滑走路に向かう緊張時でなかったら、誰もがきっと美佐子の異常に気がついたことだろう。
 メールには発信者の名前はなかった。 そこにあったのは、
 「飛行機がシベリアからウラル山脈の上空に達すると夜になり、機内の照明は消え、真っ暗になる」
 「そうしたら、おまえはトイレに行く振りをして、一番後ろの3人掛けの席の右端に座れ」
 「そして、そこにある機内誌を見ろ」
 「ほら、見てみろ、本当に一番後ろの席が空いているだろう」
 「このことを誰かに告げたら、おまえの命はない!」 という、不気味な内容だった。 そんなことはつゆ知らず、飛行機は順調に飛行し、新潟上空、そして日本海上空を飛び、やがてハバロフスクの上空に近づいたころ、客室乗務員が昼食を配り始めた。向こうの通路の担当は日本人乗務員であるが、こちら側はドイツ人と思われる、ちょっと体格のいい、陽気な乗務員であった。
 その彼女が美佐子の前に来て、何やらさかんに問いかけているが、美佐子はメールのことが気になって、それすら気がつかなかった。
顔は前を見ているものの、目も耳も全く機能していないようだった。
 言葉が分からないから返答しないのでは、と思った隣席の人が、堪りかねて、“食事ですよ、和食か、イタリアンか、聞いていますよ”」と告げた。