スイスの写真

< 目 次 >
  • 第一章 謎の携帯メール
  • 第二章 紙片と数字2515
  • 第三章 不気味な第二のメール
  • 第四章 カタコンベの秘宝
  • 第五章 ケルト模様の教え
  • 第六章 追ってきたチェゲッテ
  • 第七章 悪魔の橋で悪魔に会う
  • 第八章 急げ! 美佐子

本文はフィクションで実在とは無関係です。

第八章 急げ! 美佐子
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あまり大きなものや、重いものは荷物になるので買うのを止め、時間があったらまた帰りに、ここに寄ることにして、日本の山歩きでも熊除けに使える、ちょっと音の良いカウベル型の鈴を二つ買った。
 それから新しい山の本でも出ていないかな、と思い、書籍売場の方へ行ってみると、美佐子は 「あっ 」 と叫んで、その場に立ちすくんでしまった。
 そこに、忘れかけていた 2515 の数字がはっきりと見えたからだった。
 冊子立てのような棚に、いろいろな地区の万図が並べられていたのだ。その一番右端に2515があった。 それは、ツェルマットの地図だった。
 手にとってみたが、たまたま数字が同じだけだったのだろう。 もちろん、普通の地図と、何も変わったところはなかった。
 今日はエーデルワイスヒュッテを経由して、トリフトに上がり、そこからシェーンビエールヒュッテの方向へ下ってみようと、思っていた。 このコースは結構距離が長いけれど、この時期は陽が長いし、今日はまだ時間が早いので、十分行ってこれると思った。
 ただ、そこからツムットの方へは何度か下ったことがあるが、シェーンビエールの方へは行ったことがなかったので、マップを見てコースを確認した。そして、地図を買って帰ろうか、どうしようかと、迷いながらマップを閉じていると、紙面が大きいから、なかなか元通りに、綺麗にたためない。
 もう一度全部広げて、初めから、折り目通りにたたんでいると、マップの上の端に、 「67、68」 という数字が目に入った。 急いで、また広げ直し、上から横へと目を落としていくと、今度は、右横の端っこに、また覚えのある “数字” が見えた。
 それを見るやいなや、美佐子はびっくりして、マップを広げたままレジのところに走った。 そして、店員にお金を払い、外へ飛び出した。
 朝のメインストリートは、これから山に登ろうというハイカーたちでいっぱいだったが、その人ごみを右に、左によけながら、美佐子はわき目もふらず、駅の方へまっしぐらに走った。