グリメンツの春は遅くやってきます。
春から秋にかけては明るい陽光を浴びて村中が美しい花々で飾られるグリメンツの村も、標高が1500m以上もあるため、春が訪れるのは5月も半ば過ぎになってからです。
私は静かなジナール(ツィナール)の山々を歩くのが好きなので、夏に限らずグリメンツにはよく立ち寄ります。
茶褐色の煤けたような家々の窓辺に、こぼれんばかりのお花が飾られる夏の雰囲気も素敵ですが、まだ雪が村のところどころに残る、しっとりした早春もなかなか味わいがあります。
この時期はオフシーズンなのでシエールから乗るバスには観光客はほとんど乗っていません。それでも村のポストでPTTバスを降りれば、時折り曲がりくねった路地などでヨーロッパ人の観光客に出会います。
窓辺に吊るされたお人形やショーウインドーに飾られたお土産品が、遅い春を今かいまかと待ちこがれています。
また途中のヴィソワから行くサン・リュックの山中を歩いていると、近隣のおばあさんが“おひたし”などの食用にするため、まだ柔らかい新芽のタンポポの葉を探してはのんびりと摘んでいます。戻る→