「エミール」や「告白」を著したスイス・ジュネーブ生まれのジャン=ジャック・ルソーは、哲学者、政治思想家、教育思想家、作家として大変有名ですが、植物学者としてもよく知られています。
~これまでにわたしが住んだすべての場所のなかでビエーヌ湖のまんなかにあるサン・ピエール島のように、ほんとうにわたしを幸福にしてくれたところ、深い愛惜の念を心に残したところはほかにない。~
(ルソー著 今野一雄氏訳 引用)
これは彼の著書「孤独な散歩者の夢想」の中の一節で、この章は文学的・思想的にも名文としてよく知られています。
著書「エミール」が禁書とされ、逮捕令も出された彼は、フランスからスイスへ逃れ、モチエ、サン・ピエール 島などで過ごしますが、僅か2ヶ月で再び追われることになったこの島での生活が大いに気に入っていたようです。
彼は毎日、博物学者であるリンネの著書を携え、さまざまな植物の採集と観察をしています。
~ こうしてわたしは地上でたったひとりになってしまった。もう兄弟も、隣人も、友人もいない。自分自身のほかにはともに語る相手もいない。~
の書き出しで始まるこの書は不当な迫害を受けつづけた者の “あきらめ” と “抑え難い感情” を赤裸々に語ったものとして人々の心を強く惹きつけます。
さて小難しい話とは別に、この書の中にはありふれたつまらないこととして「ウツボグサの角(つの)をご覧になりましたか?」と尋ねる件がありますが、ウツボグサに負けず劣らずサルビアの角も大変面白いです。
角の部分を拡大鏡(ルーペ)を使って見たように、画像を加工した写真を上に載せてみましたので、不思議な角の部分の形状を確認してみてください。
ウツボグサの角よりサルビアの角の方がより際立っています。
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