5月に入るとバラの花が美しい。
首都圏での近間では、東京北区にある旧古河庭園や鎌倉文学館、箱根ガラスの森などのバラが、周りの雰囲気と相俟って、とてもロマンティックに咲いています。
スイスでは5月の第2日曜日にもなると、駅構内や街中にある花屋さんで、多くの若者たちがバラの花を買っている姿をよく見かけます。
若い女性が母の日のプレゼントでお花を購入している光景は日本でもよく見られるのですが、大きな図体をした若い男の子たちが帰宅途中に花屋さんに立ち寄ったり、一本のバラを手に携えて歩いている姿を見ると、思わずほのぼのとした気持ちになってしまいます。
スイスでバラの花といえば首都ベルンやラッパーズヴィルにあるバラ公園がとても美しいのですが、やはり思い浮かぶのはプラハ生まれの詩人
ライナー・マリア・リルケのことです。
リルケは 『マルテの手記』『ドゥイノの哀歌』『オルフォイスへ捧げるソネット』 など、たくさんの美しい作品を残していますが、彼はスイスの人里離れた小さな村々に居住したり、あるいは訪れたりして、スイスとは大変ゆかりの深い詩人として知られています。
バラの棘による病で倒れた彼は、生前に遺書を書き、次の三行詩を自らの墓碑銘に刻むよう依頼していました。
Rose, oh reiner Widerspruch, Lust,
Niemandes Schlaf zu sein unter soviel,
Lidern.
この日も教会の裏手の見晴らしの良い場所に立てられた彼のお墓には、彼が愛した真紅のバラが彼の死を悼むように優しく飾られていました。
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