サンモリッツより朝一番のベルニナ線に乗り、イタリアのティラノに向かう。真っ赤な車体の電車はサンモリッツからの急坂を一気に下り、ポントレジーナ付近で左手を見れば、ムオタスムラーユへ登るピンク色をしたプントムラーユのテレキャビン駅が見える。ここからはセガンティー二小屋を経由してアルプラングァルドからポントレジーナへ下るハイキングコースが延びている。
私も昔、何度か歩いたことがあるが、ポピュラーな初心者コースなので歩いたことのある方も多いのではないだろうか。最後はチェアリフトで下る、結構楽しいコースである。しかし、今日はこの道を行くわけでない。

電車に乗ったら進行方向に向かって右側の席に座ろう。晴れていればポントレジーナを過ぎたあたりから、森林の合間にモルテラッチ氷河と4000メートルを超すピッツ・ベルニナの美しい姿を見ることができる。一瞬の間ではあるが、まるで絵葉書のような美しさである。時間があったらぜひモルテラッチ駅で降りて、ゆっくり写真を撮ることをお奨めする。ここからのハイキングコースもある。

 

ラーゴビアンコ

カンブレナ氷河
 

しばらく森林の合間に見え隠れする山々を見ていると、やがて視界がぱっと開けディアボレッツァのテレキャビン駅が見えてくる。 ここからディアボレッツァの展望台に登ればピッツパリュなど4000メートル級の山々の大パノラマ見ることができる。また、白い雪山や美しい高山植物を見ながらの下りのハイキングコースも楽しい。

今回はさらに先へ行くことにして、電車は高度をどんどん増していく。やがて登りきった右手に乳白色をした湖が見えてくるが、ここが今回ハイキングをする起点のラーゴビアンコである。余り美しい色をした湖ではないが、前方にはカンブレナ氷河が広がる。電車をこの駅オスピチオ・ベルニナで降りて早速、歩き始めよう。

 
 
アルプグリュム駅
 

駅前から湖を前にして左手に歩いて行くが、半周くらい廻った奥から少しづつ下り始め、次の駅であるアルプ・グリュムまでハイキングしよう。わずか1時間半くらいのミニハイキングコースであるが、晴れていれば素晴らしい景色を堪能できる。歩きやすい道を下って行くと、やがて氷河を真正面から見ることができる小高い山の上のサッサル・マソンのレストランへと続く道と、やや左に下ればアルプ・グリュムのレストラン「ベルベデール」に向かう道の分岐にでる。

どちらも同じところへ出ることができるのだが、見える景色は大分違う。今回は左の道を行くが途中小さな池の前では、森林と電車を手前に置き、白い雪山を撮ることができる。そして、駅から1時間くらい歩いたところでやや道は登りとなり、急に城壁のような、雪崩よけのような石の囲いがたくさん見えてくるが、ここを通り抜ければベルベデールのレストランはもう目の前である。ホテルの向こう側はテラスになっており、ここから見るパリュ氷河はことのほか美しい。

ここではしばしの休憩をとり、この素晴らしい景色を堪能しよう。 持ってきたパンに、スープを注文して腹ごしらえ。 見下ろせばアルプ・グリュムの可愛らしい駅が見える。

 

パリュ氷河
 
ベルニナ特急
 

パリュ氷河は、近年の温暖化現象ですっかり後退してしまい、昔の迫力ある氷河の面影はない。 それでも真っ青な空のもと、谷間に向かって流れるグレッシャーは超美しい。
さらに目を先に転じれば、遠くポスキアーボ方面から赤い電車が息絶え絶えに峠に向かって登ってくるのが見える。まるで模型の電車を見ているようだ。
しばらく休憩したら、アルプグリュムの駅へ向かって一気に坂を下り、電車に乗りイタリアのティラノに向かう。

 

巨大ループ
 
ボスキアーボ湖

 

電車は長い、長い坂をゆっくりと時間を掛けてくだり、やがて細長いボスキアーボ湖の湖岸にでる。電車はこの湖を半周するのだが、まるで生き返ったかのように軽快に突っ走る。 空の青が湖面に映り、湖はさらに色濃い青に染まり素晴らしい景観をみせる。

 

ティラノ
 


マドンナ教会

 

ティラノはもうイタリア、やはりスイスに比べ段違いに暑い。オスピチオ・ベルニナ駅からは約1800mぐらい下ってきたのだから仕方ないであろう。真昼の強い日差しと熱風のようなむーっとした暑さで木陰に入っていないといられない。
急ぎ足でマドンナ教会など主だった見どころを見学する。そして有名な、自動車を待たせ路面を横切る電車に手を振りながら、早々とカフェに飛び込み涼をとる。
サンモリッツから、途中下車しなければ2時間半くらいの素敵な電車の旅である。

 


路面を横切る電車

   
スイスとイタリアのティラノ駅

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