マッターホルン:ヘルンリ小屋往復ハイキング

   

ツェルマットのヴィンケルマッテンからリフトに乗り、途中駅フーリを経由して終点駅のシュワルツゼーに向かう。  
駅を降りるとすぐ近くにホテルレストラン「シュワルツゼー」がある。ここでトイレを済ませ、身支度をして緩やかな坂をマッターホルンの方へ向かって下ると、下に美しい湖と小さな白い礼拝堂が見えてくる。
ここが黒い湖と呼ばれる有名なシュワルツゼーである。
今日は雲一つない好天なので青い湖にはオーバーガーベルホルンなど雪を抱いた山々が倒影し大変美しい。

 

 

この湖へは帰りにゆっくりと寄ることにして、いまは真っ直ぐヘルンリ小屋を目指して進む。歩き始めるとすぐにかなりきつい登りとなるが、急がないで一歩一歩ゆっくりと登っていこう。
目の前にそびえ立つマッターホルンの雄大さに圧倒されそうだが、所々の崩れそうな岩壁には写真のような鉄製の階段が設けられているので比較的歩きやすい。
やがてなだらかな尾根に出ると北壁が間近に見えてくる。壁の中腹には分厚い氷河がのっかっている。普段見慣れた東壁も美しいが、北壁も負けず劣らず美しい。ここら辺りは危険な場所でないので左右をキョロキョロしながら歩くと、足下にはフィールドエンツィアン、フィテウマ、タカネツメクサなどが群生している。
よくまあこんな高い所に咲いてるなぁ〜、と感心する。

   

 
 

もうここはかなり高度が高いので、さすがに高山植物も限られたものしか咲いていない。可愛らしい花を見ながらしばらく歩きやすい道を進むと再び急登になるが、マッターホルンは岩陰に隠れてしばらく見えなくなる。そして何十回となくジグザグを繰り返したあと、最後の急登を登るとヘルンリ小屋のすぐ下に出る。

隣にはベルヴェデール山岳ホテルが建っており、ここのテラスで一休みしていこう。
ヒュッテなどで休憩を取ったり、トイレを借りたりする時は、必ず何かを注文することをマナーとしよう。
今日はパンと缶詰を持って来たのでブラウン・シチュースープを頼んだが、これがことのほか美味しい。さらに驚くことは、こんな高いところなのに料理メニューは結構豊富で、スパゲッティーなどもあり、料金もほとんど下界と余り変わらない。
日本だったらすごい高い値段がつけられていることだろう。

 

 

ここからの展望は抜群だ。 ブライトホルン、クライン・マッターホルン、チナールロートホルン、ヴァイスホルンなど4,000m級の名山が目白押し。雪を抱いた山々がぐるりと周りを取り囲んでいる。
クライン・マッターホルンの展望台や、これ以上高いところから見渡すことはできないのでは、と思えたゴルナーグラード展望台でさえ、はるか下の方である。今日のように天気がすばらしい日は、登っているときは暑くて仕方がないが、こうして景色を展望するには最高である。

ヒュッテのテラスには海外各地から集まってきたたくさんのアルピニストたちが双眼鏡をのぞいている。みんな明日の登山のコース取りを真剣に研究しているのだろう。日本からのアルピニストもたくさん来ており、ここはクライマーのメッカである。英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、日本語などが入り乱れてとびかっている。同じルートをいっぺんに多くのクライマーが登るので大変だが、ここには国境のようなものはないようだ。
(注)ヘルンリヒュッテは2015年にリニューアルされています。写真はリニューアル前の古いものです。

   

 

 

ヒュッテで一休みしたら折角ここまで登ってきたのだから、ホテルの横を回って登り口まで行ってみよう。岩がごろごろした斜面を登ると、急に辺り一面雪となる。自分がいま、遠くから見えていた白い雪の部分にいるのだろう。上の方にはソルベイ小屋が小さく見える。登山経験のない方は必ずここまでで止めること。 
さらに進むと登り口のすぐ下までいくことができる。50mくらいあるだろうか、滑りやすい雪渓を注意して渡ると、15mくらいある最初の岩壁の下まで行ける。そこから登山ルートを見ると、すぐ左手にマリア様の像が埋め込んである岩場がある。
ここで足を滑らせば 間違いなく何百メートルも続くマッターホルン氷河の谷底へまっしぐらだ。
ここから先は完全にアルピニストの世界 、しばらく登山者たちのクライムを目の当たりにしたら再びヘルンリヒュッテを経由してツェルマットの村ヘ下ろう。

 

 

通常マッターホルン登山はヘルンリ小屋に宿泊して、午前3時くらいに出発する。登り始めて3時間くらいで中間点となるソルベイ小屋に到達し、頂上までは6時間くらいかかる。 
ソルベイ小屋にそのくらいで着かないと頂上を目指すには無理だという。 ヘルンリ小屋の壁には、8才の日本人が登ったと書いた張り紙があった。
ヘルンリヒュッテからの素晴らしい景色を堪能したらツェルマットに向けて下っていこう。下から登ってくる登山者に、「ハロー」「ボンジュール」「グリュエツィ」 そして「こんにちは」を取り混ぜながら挨拶し、前来た道を戻る。岩がゴロゴロして乾燥したダートはよく滑るので、登るときより下る方が大変だ。急がないでゆっくり下っていこう。帰りはシュワルツゼー駅からテレキャビンに乗ってヴィンケルマッテンに下りてもよいし、元気があったらシュタッフェル、ツムット村を経由してツェルマットへ下ってもよい。

   

 

写真は上から見たヘルンリ小屋とホテルである。
このコースは過去5回ほど登っているが、標高が高いので当然生育する高山植物は限られる。その代わりお天気が良い日のハイキングは眺望が抜群である。

<コースタイム>

・シュワルツゼーからヘルンリ小屋まで2時間半。 
・ヘルンリ小屋からシュワルツゼー1時間半。