アニビエの谷はエランの谷の隣に位置し、美味しいワインを産出していることで知られるシエールの町から入っていく。交通機関としてはバスか車を利用するしかないので、結構アプローチは悪い。駅前左手のバス乗り場からPTT(郵便)バスに乗ると、30分くらいでヴィソワの村に着く。 ここで道は分岐し、右へ折れればグリメンツの村へ、左手へ行けば、ジナールの村へとつづく。ジナールはチナールとも呼ばれるが、ここはフランス語圏なので仏語での発音のジナールの方が通じやすい。
グリメンツの村
グリメンツの教会
グリメンツの村はかつてヨーロッパで1,2位を争うほど「花の美しい村」に選ばれたこともあり、家々の窓辺にはたくさんの美しい花が飾られている。明るい太陽の日差しを浴びて、赤、白、ピンクのゼラニウムが信じられないほど鮮やかな彩りを演出する。また、ここには素敵なホテルがたくさんある。私は、バス停のすぐ近くにある、アラマレンダという三つ星ホテルに泊まったが、値段も割合安く、お薦めである。 (注)このホテルは、今はなくなったと思う。日本のちょっとした民芸品をお土産に持っていってあげたら、すぐフロントに飾ってくれて、お返しにとワインをプレゼントしてくれた。レストランはすぐ側のモアリーが日本人好みの味で大変おいしい。
ヴィソワの村
アニビエの谷には、たくさんのハイキングコースがあるが、やはりジナールの村へ行き、ソルボアからテレキャビンに乗り、ソルボアのコルまで登り、モアリー湖ヘ下るか、テレキャビンの駅を左に行き、ジナールの谷深く入って行くルートが一番手ごろで景色も素晴らしい。 (注)2015年にグリメンツからソルボアのコルへ一気に上がれるロープウェイがオープンした。 高山植物もたくさん咲いており、ソルボアのコルからは360度の大パノラマである。4500mを超えるヴァイスホルン、ナイフリッジが美しいジナールロートホルン、オーバーガーベルホルン、双子の山ベッソが眼前にそびえ立ち、さらにその隣にはダン・ブランシュ、そしてジナールの谷奥深く山小屋の方へ向かえば、マッターホルンの頭も見ることができる。マッターホルンの頭は、ジナールからソルボアのコルへ上がるロープウェイの中から、7~8秒間見ることができる。
グリメンツの観光案内所
プティ・ムンテ (Petit Mountet) の山小屋の方へ向かうハイキングコースは道の両側が美しい高山植物でいっぱいで、まるで天国を歩いているよう。左手にはずっと真っ白な雪に覆われたジナールロートホルンなど4000m級の高山を見て歩き、ガレキの多い緩い登りを、山を巻くように登っていく。そして途中で小さな滝のような川を渡たり、小屋へと向かう大変楽しいコースだ。(下図(2)のルート)
ソルボア
ただ、このコースはルートが山の陰になるため、雪は遅くまで残り、他と比べるとハイカーは少なく、ましてや日本人にはまず会うことはないだろう。またスイスの他の地域と違って、道標があまり整備されてないので要注意である。そしてジナールに泊るのでないなら、帰りのバスの時間にも十分気をつけて歩こう。もう一つのソルボアのコルに登るコースは、テレキャビンの駅を降りたら前方に見える山の頂上へと登るコースである。天気さえよければ、道幅も広いし、危険な所はほとんどないので安心して登れる。ここも道の両側には高山植物が咲き乱れる。ヴィオラ、エンツィアン、モス・キャンピオンなど赤、青、黄の花を愛でながら1時間半位歩けば頂上である。振り返れば、ジナールロートホルンなどが超美しい。ただしテレキャビンの駅の横にはレストランがあるが、頂上には、小屋はないので飲料水などは忘れずに持参願いたい。
ソルボアのキャビン
モアリー湖
頂上眼下には、形容しようのない美しい色をしたモアーリ湖がひろがる。そしてその湖畔へと下るハイキングコースがつけられているので、そこを歩いて下るのも楽しい。ただし、すぐ真下に湖が見えているので簡単に下りられるかと思うと、富士山の砂走りのような滑りやすい道なのでなかなか下り難い。特に雨の日などは十分注意願いたい。 湖畔にはレストランがあり、そこからバスに乗ればグリメンツまでは15分位である。歩いても歩けない距離ではない。
双子の山ベッソ
左上の写真の頭が二つに割れた山が有名なベッソである。また右下の写真のように、黄色いキンポウゲの花の群落がたくさんあり、青い空と、白い雪山とが相まって最高のナチュラルハーモニーを醸し出す。 そして、時間があったらぜひ静かで、落ち着いたジナールの村を散策してみよう。
ジナールの村
ヴァレーエボレーヌグリメンツ