【はじめに】このページはパソコン、スマートフォンのどちらでも見やすいようにレスポンシブで制作しています。パソコンの場合は、文章の前についている番号順に縦にスクロールしてご覧ください。
1 グレックシュタインヒュッテはグリンデルワルトの村にあり、クリンネンホルン、ヴェッターホルンへ登るルート上に建つレストランを兼備したSAC(スイスアルペンクラブ)の山小屋です。
2
このヒュッテへ行くには、グリンデルワルトのバス乗り場からグロースシャイデック行き(Line 128)のグリンデルワルト村営バスに乗り、グレックシュタイン停留所あるいは、その上のラウヒビュール停留所で下車します。所要時間は20~25分くらいです。
そしてバス通りの進行方向右手に立つ「グレックシュタインヒュッテ登山口」の道標に従って登り始めます。
私が最初に訪ねた1995年は登り口がなかなか分かりにくかったのですが、今は大きな看板と道標が整備されています。
(注)このルートのほかにもグリンデルワルトの村はずれ(ホテル・ヴェッターホルンの先)から登り始める道(地図の緑のコース)もあります。
途中から同じルートに合流するのですが、前述のルートで行った方が時間短縮できるし、登るのも楽です。
3 このページでは、相棒が一週間後に合流する予定になっていて私一人で単独行した時と、その後数回歩行したときの記録をベースに、これまで前編・後編として掲載していたページを合体、リニューアルしています。
この頃は、まだこのコースに関するガイド本などはなく、ましてやホームページなんか私の開設しているサイト以外ありませんでしたので、事前の情報収集が大変でした。
また、当時は未だデジカメのような便利なカメラはなく、昔、紙焼きしておいた写真をスマホで再度撮りなおし画像処理していますので、画質はよくありません。
4 歩き始めると、目の前にはヴェッターホルン(Byhorn+Chrinnenhorn+Wetterhorn = 以下ヴェッターホルンと称す)の垂直な壁が屹立し、前方上にはナイフのように薄く研ぎ澄まされたアイガーが高く聳えます。
正面から見るアイガーは優しい山容ですが、横から見るその姿は不気味なほど薄く鋭いです。
バスを降り美しい牧草地を抜け、可憐な高山植物の群落を横切り、さらに雪渓のある斜面を慎重に進みます。
このあたりは山陰になりますので真夏でもかなりの残雪があります。
雪渓を渡ると、いよいよヴェッターホルンの壁を回り込む登山道に入ります。
岩壁を削って人ひとりがやっと通れるくらいの細い木立の中の道を、アップダウンを繰り返しながら登ると、そこはもう森林限界、生えているのは背の低い草だけの世界になります。
このあたりのコース上には可愛らしいヒツジさんがよく顔を出します。
5
さらに進むと、道はますます険しくなり、ヴェッターホルンの壁をぐるっと回り込むように登って行きます。
右手は鋭く切れ落ちた断崖絶壁、下を見れば目がくらむほどの深い谷、不気味な氷河のターミナルモレーンが下方へと流れています。
単独行で登ったときは、朝からまだ誰にも行き交っていなかったので、もしここから落ちたら命はないだろうな、それに誰も見つけてくれないだろうな、なんて良からぬことを思ったものでした。
岩に打ち込まれた鎖につかまりながらさらに登っていきます。
6
40~50分ほど歩くと、クリネンホルンから発するWyssbach(ヴィスバッハ川)が滝になり、登山道の上からシャワーのように降り注いでいる場所を通ります。
その下をくぐり抜けていきますが、真夏のハイキング、もうここまで来ると体中汗びっしょりになっています。
この天然シャワーはまさに天の恵みのようで殊のほか気持ちが良いです。
シャワーで涼を取り元気になったら、再びヴェッターホルンの懐深くへ入り、さらに左手クリンネンホルン側へ大きく廻り込みます。
このあたりまで来ると、村の方からは見えなかった上グリンデルワルト氷河がすごい迫力で眼前に迫ってきます。
また、クラインシュレックホルン、シュレックホルンの頭が小さく見えてきます。
7 廻り込むと今度は目に優しい順光線になり、草丈の低い高山植物がここかしこに咲く道を登っていきます。
8やがてヒュッテが小さく見えてきて、晴れていれば常にこの小屋を目指して登って行けば良いので道に迷う心配はありません。
9
上グリンデルワルト氷河がどんどん眼前に近づき、クラインシュレックホルン、シュレックホルンも美しいピークを見せてきます。
しばしその美しさと氷の芸術に見入っていると、時たま雷が落ちたような、はたまたジェット機のバックファイヤー音とも思えるドドーンという大きな音が遠くから聞こえてきます。
氷河が割れてすべり落ちている音なのです。
続いてそこから細かな氷が滝のようになり雪煙を立てて流れ落ちています。
そして暫くすると何もなかったように再び静寂な世界に戻ります。まさに繰り返される自然界の不思議。一人で、ぼーっと、いつまでもここにいて見ていたくなります。
10 踵を返し歩を進めると、はるかヴェッターホルンの懐の岩上(クリンネンホルンの懐)に目指すグレックシュタインヒュッテがだんだん大きく見えてきます。
ここまで来れば、もうヒュッテまでは一時間ぐらいです。
そして、最後のかなりきつい岩場をジグザクしながら登ると、もうヒュッテは目の前です。
ヒュッテの横にはテラスがありますので素晴らしい展望を満喫しながら、ぜひ美味しいズッペとクーヘンをいただきましょう。
11
近くには、さらに上のクリンネンホルン、ヴェッターホルンへ行く登山者向けのルートを表示した青色の道標があります。
クリンネンホルンへの登山道から見たグレックシュタインヒュッテです。
12 ヒュッテ壁面のプレートには、グレックシュタインヒュッテ Erworben(SAC登録・取得)1920年 標高 2,338mと記されています。
13
名残惜しいですが、美しい景観を堪能したら、帰りのバスの時刻表を睨み、いま登って来た道を慎重に下って行きましょう。
氷河の流れる谷間からグリンデルワルトの村が見えています。
【所要時間】このコースの所要時間は、登り3時間弱、下り2時間半が現地で言う標準コースタイムです。
現地の人はみな足がすごく速いし、あまり景色をゆっくり眺めたり、写真を撮ったりしないので、日本人の場合は標準コースタイムにプラス1時間して考えた方がよいでしょう。
◆グレックシュタインバス停~グレックシュタインヒュッテ往復 6~7時間。
途中で昼食をとったり、小休止をしたり、写真を撮ったりしますので往復で7時間くらいと考えておきましょう。
【ご注意】ここは午前中登る時は日陰になりますが、ヴェッターホルンの向こう側に回ったとき、そして帰りに下るときは遮るものがないので、晴れた日はものすごく暑くなります。
必ず飲料水は多めに用意しましょう。
また、コース上には岩壁に設けられた細い道をロープを伝って歩く場所が数箇所あります。
日頃からよく山登りをしている方が、普通に歩いている限りコースを踏み外すことはまずないでしょう。
しかし、日本から長旅をした翌日などは時差ぼけや体調不良などでめまいがしたり、つんのめったりすることがあります。大変危険なので、シニアや初心者は、必ず熟練者の同伴の下でお楽しみください。
おまけ
このコースでは高山植物や高山蝶がたくさん見られますので、私は大昔から好んで歩いています。
高山植物の撮影や、美しいチョウの飛来を待って同じ場所で1時間くらい費やすことはザラです。
高山植物やアポロウスバシロチョウ(Apollofalter 学名:Parnassius apollo)やコヒオドシ(kleiner Fuchs 学名:Aglais urticae)などを「組み写真」にしてみました。
Dukatenfalter♂ (学名:Licaena virgaureae)
HOMEへ戻る