スイスやオーストリアなどを個人旅行する際、必ずお世話になるのが路線バスです。
スイスやチロルのバスは、もちろん地域によっては大変便数が少ないところがありますが、こんな山奥の小さな村まで、よくまあ、と思えるほど、国中を網の目のように走っていますので、大変助かります。
ある年の夏、私はハイキングに出かけるため、宿泊ホテル前の停留所からバスに乗りました。
朝一番の始発バスでしたから、まだ誰も乗っておらず、乗客は私たち二人だけです。
この路線は、山あり、谷あり、氷河ありの絶景を何度も通り抜けていくことから、現地では大変人気の高いコースです。
そんななか、スケールの大きな氷河が眼前に迫って見えた時、さらにその前景に道路脇からのんびりとゲムゼの群れが横切ったりした時など、運転手さんは、その都度バスを停車してくれました。
そしてシャッターチャンスだからバスを降りて写真を撮れ、と、ドアを開けてくれました。
公共バスの運行ルール上、停留所でもないところで乗客を降ろしたりしては本当はいけないのかも知れませんが、その親切に感激し、下車する際に持っていた女の子向けの日本のお土産をプレゼントしました。
そして翌朝のこと、もう一つのハイキングコースを歩くためホテル前の同じ停留所でバスを待っていると、反対路線の停留所に前日乗ったバスが停車し、運転手さんがわざわざバスを降り、お礼の挨拶をしてくれました。
あの運転手さんには娘さんがいて、差し上げたお土産を気に入ってくれたのかも知れません。
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