【はじめに】このコースは歩行距離も長いし、真夏でも残雪が多く、他のグリンデルワルトのコースと違いハイカーもあまり歩いていません。山歩きの中級者以上向けで、初心者の方には避けていただきたいと思います。
1 今回ご紹介するコースはグリンデルワルトの定番コースのフィルストからバッハアルプゼーへ向かう途上から分岐してスタートします。
このコースは、ホームページはもちろん、まだガイドブックや現地のブローシャーにも載っていないころから、私のこのサイトでご紹介していましたので、今では大分ネット上にも情報が掲載されるようになってきました。
ただ前述した理由に加え、このフィルストの裏側は天候が不安定な地域ですから個人的にはあまりお薦めしません。
写真はバッハアルプゼーとファウルホルンです。
2 フィルスから30~40分くらい歩き、もうすぐバッハアルプゼーというコース沿い(2,275m)に道標が立っています。直進すればバッハアルプゼーへ5分、ファウルホルンへ1時間35分、斜め右に折れればアクサルプ(Axalp)へ2時間50分というところです。
今回は、ここで斜め右に折れアクサルプ方面へ向かってややきつい坂を登って行きます。
高度を増すごとに左手にバッハアルプゼーの湖畔を巻いてファウルホルンへ上るコースが俯瞰できるようになります。
お天気はいまいちですが、山は残雪があり今が一番美しい時期です。
3 さらに7~8分ほど登ると、湖とは言えないような小さな池:スタントゼ―( 2,335m)が見えてきます。湖のほとりには黄色いリュウキンカなどの高山植物が一面に咲いています。
朝のテレビの天気予報では、今日は午後から崩れると伝えていましたが、案の定、早くもベルナーオーバーラント三山側が雲で覆われてしまっています。
逆光のせいもありますが、残念ながら美しいヴェッターホルンも良く見えません。
4 さらに緩く右回りで20分ほど登ると、先ほど俯瞰したファウルホルンへ向かうコースと合流する分岐に出ますが、ここでは直進します。
岩に描かれたペイントに沿って黒い城壁のような岩山リッツェングラットリ(Ritxengrätli)の裏側(北側)に回り込みます。
そしてさらに15分ほどガレ場を登るとオーバーベルクを経由してアクサルプへ下る分岐 (このコースは別途紹介済み) があります。ここでも直進し東へ向かいます。
5 そしてその辺りまで行くと今日歩く予定のコースが望めます。ここは山陰 (北側) になりほとんど一日中陽が当たりませんので7月、8月でも通常このくらいの残雪があります。
右側に城壁のように続く黒い岩山はリッツェングラットリから続くヴィッダ―フェルトグラットリー(Widderfeldgrätli)です。
また、左奥に見える三角形の山はシュヴァルツホルン(2,927m)で、グリンデルワルト側からは比較的楽に登れます。
6 今日はこの長い谷底のコースを延々と歩き続け、シュヴァルツホルンの先のヴァルト(Walt 2,704m)から青い氷河 (Brau gletscher) を下ってグロスシャイデックへ下りるか、手前のヒンタービルク(Hinterbirg)で左折してアクサルプへ下りるか、する予定です。どちらにも大きな氷河や雪渓がありますので、お天気次第で判断することにします。
7 残雪や雪渓の淵には可愛らしい高山植物が多く生育しますので、グリンデルワルトに来れば、ここはよく歩く私のお気に入りのコースの一つです。
そんなことで、いつものように定点観測中の場所に咲く花の写真を撮っていると、お天気はどんどん悪くなってきて辺りにはガスが立ち込め、視界もだんだんきかなくなってきました。
8 やがてリッツェングラットリの壁の下にハーゲルゼ―(Hagelsee 2,335m)がぼんやりと見えてきます。やはりこの年も湖面はまだ凍てついたままです。注意して見ていないと湖とは気がつかず通り過ぎてしまうところです。
いつもこのコースはコバルトブルーの湖面と、景色が美しい場所と誤解されると困るので、夏場でもよくこんな状態になるということを知っておいて欲しいと思います。
9 コース上にはハーゲルゼ―(Hagelsee 2,335m)の道標が立っています。
ここではAxalpへ2時間10分、Waltへ1時間20分と表示されています。現地に立つ道標の所要時間は一般的な日本人ハイカーには少しタイトです。
通常、これに30分くらいプラスして考えておくと安心です。
下の写真は、露出調整が面倒だったので上の写真を後で画像処理し文字が見えるようにしたもの。
10 こんな気候にもかかわらず、あたりの大きな岩の隙間には保護指定植物や、ラヌンクルス・モンタヌス、ソルダネラス(イワカガミの仲間)、チングルマなどの高山植物が美しく咲いています。
11 そうこうしているうちに雷が鳴り出し稲妻が走り、雪がじゃんじゃん降ってきました。
写真のように視界もあまりきかなくなっています。未だ凍てつく湖面にも新たな雪が積もってきて、ほとんど湖と識別できなくなってきます。
このコースではよくこんなお天気の急変があり、珍しいことではありません。
仕方がないので、ここでマクロ写真用のカメラをザックにしまい、歩くことに専念します。
12 ハーゲルゼーを通過して、次のへクセンゼー (Häxensee) へと向かいます。
ぼやけて見えるヴィッダ―フェルトグラットリーを右手に見ながらさらに雪上を東に進みます。
実はここからが結構長いのです。
13 不気味な雷鳴は依然止むことなく、雪はますますひどくなり視界は100mくらいになってきました。周囲はもう真っ白という状況です。
その時、ひとりの男が右の方から突然現れてびっくりさせられました。シュヴァルツホルンから下ってきたハイカーで、私とは逆のコースへ向かうといいます。
お互いにびっくりしたのでしょう。一言かわしただけで、その人影は、またすうっと霧の中に消えていきました。
14 写真はへクセンゼーですが、湖面は氷と雪で覆われ、ほとんど分かりません。
すぐ脇を抜けて行きますので、わずかに見える湖面を写真にとってみました。
15 ヘクセンゼー (Häxensee)を過ぎると分岐があります。 下の写真は、グロスクリンネ(Grosse Krinne 2,684m=Grossi Chrinne)の北側に位置するヒンタービルク(Hinterbirg 2,600m )の道標です。
真っ直ぐ進めばヴァルト(Wart 2,704m)へ25分、右へ登ればシュヴァルツホルンへ1時間20分、左へ下ればオーバーベルク(Oberberg)を経由してアクサルプ(Axalp)へ2時間45分というところです。
道標の文字が見えるように上の写真を後で画像処理したもの。
16 ここで思案です。グリンデルワルト側よりブリエンツ側の方が天気が早く回復するだろうと予想し、結局、今日はアクサルプへ下ることにしました。
こちらも結構残雪が多いうえ、積もる雪の中をオーバーベルクを目指して長い急な雪道を下っていきます。1時間40分ほど下ると、前半で案内したハーゲルゼ―(Hagelsee 2,335m)に立つ道標にあったアクサルプへ下るコースと合流します。
800mほど下ったのでようやく雪もやみ、周囲が明るくなってきました。ルゥチェンタルティ(Lütschentälti 1,854m)村の牧舎を過ぎ、さらに1時間40分ほど歩くとアクサルプの村の中心(1,534m)にあるバス停に到着します。
標高差でほぼ1,100m下ったことになります。
17 アクサルプの村へ下山してみれば、お天気は嘘のように晴れ上がりました。こちら側に下りて正解です。
アクサルプの村からはPTTバスに乗りブリエンツ駅に向かいます。このバスは便数が少ないうえ、最終便は早い(17:00時過ぎくらい)ので、このコースを歩かれる方は事前によく時刻表を確認しておきましょう。
ブリエンツ駅までの所要時間は40分くらいです。
18 写真はブリエンツの駅舎です。今日はグリンデルワルトに宿を取っていますので、ここから電車に乗って戻ります。
【所要時間】
◆ フィルストからハーゲルゼー 1時間半
◆ ハーゲルゼーからヒンタービルク 1時間半
◆ ヒンタービルクからアクサルプ 3時間
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