この話は当サイトの「アルプスの花たちとの会話 “水中花、ゆらゆら揺れて”」で掲載していたものです。
私の好きな作家である五木寛之さんの小説に「水中花」というのがあります。
この作品は、もう30年以上も前のことですが、松坂慶子、船越英二、近藤正臣などが出演し、TBSでテレビドラマ化もされました。
その主題歌「愛の水中花」は、五木さん自身が作詞し、松坂慶子が歌いましたが、大変流行ました。
上の写真は増水により、頭だけを出して湖水の中で咲くエウフォルビア(トウダイグサ)です。中には頭も浸かってしまっている花もあります。
通常年なら、水の被らない湖畔に、草丈1mくらいの茎を伸ばして咲いているのですが、この年は春に、山岳地帯に大雪が降り、大量の雪融け水が湖に流れ込んだことから湖面が急上昇し、花たちはそっくり沈んでしまいました。
この湖では10年に一度くらいの割合で、このような現象が起こるのですが、あと1~2日くらいでダムに貯まった水を放水しないと大変危険な状態になっています。
放水したときの流水の勢いは、それはそれはものすごい迫力で、いつもは、微かにせせらぐ小さな川が、一気に草木をなぎ倒し、土砂を下流に押し流す急流となって流れ出します。
その時、普段は静寂なこの小さな村に、けたたましい警報のサイレンが鳴り響きます。