フランス、スイス、イタリア、ドイツ、オーストリア…と、ヨーロッパ中央部を東西に約1000kmにもわたり連なる長いヨーロッパアルプスには、さまざまな美しい高山植物が生育しています。
下の2枚の写真は、ラヌンクルス・グラキアリス(学名 Ranunculus glacialis)ですが、この花は生育する地域や標高、さらに“経時変化”などによって、これが同じ種類の花か? と思われるほどの大きな差異が見られます。
これはキンポウゲ科キンポウゲ属の花ですが、属名のRanunculusは、ラテン語で“カエル”という意味のranaに由来しています。
また、種小名のグラキアリスは、“氷のような”とか“極寒の”という意味です。
属名に、カエルに因んだ名がついたのは、この花が、カエルがよく棲息するような湿った地を好むことによっています。
写真の花はオーストリアの高山で撮影したものですが、標高は約3,000m、7月末でも湖面が凍っている山上の氷河湖の近くです。
この花の生育範囲は標高2,300m~3,200mですが、まだ残雪が多い時期に見る花は、瑞々しくて、とても美しいです。
花の色が、時の経過とともに白からピンクへと変色するものもあり、縁取りに濃いピンクのしぼりが入る時期に見るこの花は、まさに“旬”の美しさです。
ただ残雪の多い時期の高山の山歩きは危険が伴いますので、経験豊富な方だけにしてください。