キジカクシ科ツルボ属に、キオノドクサ・ルキリアエ(Chionodoxa luciliae) という、可憐で、とても美しい花があります。
和名ではユキゲユリ (雪解百合) という大変ロマンティックな名で呼ばれていますが、この花は文字通り、雪融けとともに顔を出し、花芯が純白で、明るいブルー色の小さな花弁を星型に開かせます。
原産は、地中海の東岸から小アジアですが、スイスでは、低山から亜高山に生育し、開花時期は2月から4月頃です。
生育地が、ごく狭い範囲に限られたうえ、花の咲く期間も短いので、スイス旅行者の多くが訪ねる夏の時期では、まず観賞することができません。
この花は、スイスの植物学者:ボアシエが山歩き中に発見し、種小名に付く 「ルキリアエ」 は奥さんの名前(Lucile)に因んでいます。
私はこの時期に、よくスイスや仏、墺などの近隣諸国へ行きますが、クロクス、ミスミソウ、クリスマスローズ、チューリッパ、セツブンソウなどが雪融け直後の湿った落ち葉の堆積を割って顔を出す光景に、夏のお花畑に劣らず感動させられています。
なお、このキオノドクサは、従来はユリ科キオノドクサ属でしたが、植物分類法の変更により、馴染みの薄いキジカクシ科ツルボ属に変更になりました。
また園芸店などで 「チオノドクサ」 という名で売られている花は、この「キオノドクサ」のことです。
なお、5月初旬に、よく日本でも見られる園芸用のスキラ・ペルヴィアナ(写真上)という花は、形状があまりこれに似ていませんが、この花の親戚です。
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