スイスの写真

夏になるとたくさんのハイカーが訪れるスイス。
アルプスの貴婦人と呼ばれる可憐なエーデルワイスの花を求めて、“歴女”美佐子は今年もスイスへ旅立った。
その美佐子のもとに、突然届けられた謎の携帯メール。
そして、現れては、消え、消えては、現れる、黒いサングラスを掛けた薄気味の悪い男と女。
謎の数字 「2515 ・・・」 を追って、主人公美佐子は北へ、南へと、スイスをかけめぐる。
美しいスイスの村々を舞台にくりひろげられる、奇想天外なサスペンス紀行。
追う美佐子、追われる美佐子が見たものは・・・。

< 目 次 >

第一章 謎の携帯メール
第二章 紙片と数字2515 
第三章 不気味な第二のメール
第四章 カタコンベの秘宝
第五章 ケルト模様の教え
第六章 追ってきたチェゲッテ
第七章 悪魔の橋で悪魔に会う
第八章 急げ! 美佐子(最終回)
*本文はフィクションで、実在とは関係ありません。

第一章 謎の携帯メール
1

8月10日の午前。
朝方から降っていた雨もやみ、成田空港の南ウイングはたくさんの海外旅行客で賑わっていた。今日からお盆休みが始まり、最近の円高傾向も手伝って、若者たちがこぞって海外へ飛び立とうとしているのだ。


 湯沢美佐子は、若者と呼ばれる年齢はもうとっくに過ぎてしまっているが、お盆休みの後ろに有給休暇をくっつけて、約2週間のスイス旅行を楽しもうと、春ごろからプランを練っていた。
  スイスへはこれまでもツアーで3回ほど行ったことがあるが、山や花の写真を撮ることが趣味なので、せかされるハイキングは好きではなく、5年前からのんびりマイペースで楽しめる個人旅行で旅をすることにしている。
  スイスは治安がよく、かつ鉄道やロープウェイ、バスなどの交通網が国のすみずみまで整備されているので、これまで女の一人旅でも不安になったり、困ったことに遭遇することはなかった。 そのうえ、スイスにはスーツケースのような大きな荷物は駅から駅へと運んでくれるライゼゲペックという荷物託送システムがあるので、それを利用すれば女の一人旅でもあまり負担にならないのだ。
 この日はいつものように10時25分発のチューリッヒ行きのフライトに乗る予定なのだが、成田へ向かうN'EX (成田エキスプレス) が横浜駅を過ぎた辺りで急に減速し始め、それがやがてのろのろ運転に変わり、ついにはストップしてしまった。
  10秒経ち、15秒経ち、やがて車内に不安気な空気が漂い始めたころ、やっと車内放送が入り、人身事故による緊急停車だという。
  美佐子はこれまで何度もN'EXには乗っているが、こんなことは一度もなく初めての経験だったので、すぐさま、遅れたらどうしよう、万が一、飛行機に間に合わなかったら一体どうなってしまうのだろう、と不安になった。
  他の乗客はほとんどが夫婦連れか、グループ、顔を見合わせながら何やらボソボソと話をしている。 ひとりぼっちの美佐子は急に心細くなった。