この年はまだ9月中旬だというのにグリンデルワルトにはかなりの雪が降った。グロースシャイデック行きの村内バスがクローズドになるほどだ。
同じ頃、サースフェーにも大量の雪が降り、前日まで美しいミシャベル山群を眺めながら素晴らしいハイキングを堪能してきた。


バッハアルプゼーに佇む二人

通常のこの季節なら一面に緑の牧草地が広がる道を早速歩き始める。今日は朝一番のテレキャビンで上ってきたので、コース上はまだ2~3人しか歩いていない。
新雪なので、ずぼっ、ずぼっ、と膝までもぐってしまう。
吹き溜まりでは優に70センチは超えているだろう。雪のため夏のハイキングコースが定かではない。ただこのコースはこれまで何度も歩いているので、勘を頼りに歩くことができる。


フィルストからの歩き始め

バッハゼーを近くにして

先に歩いていたハイカーが通常のコースでない道へ入り込み、通行不能となって戻ってくる。冬山ではないのだが、雪が結構深いので歩くのも普段の倍くらい疲れる。
それでも今日は朝から快晴ということと、まだ9月の強い日差しなので半袖シャツでも暑いくらいだ。サングラスを掛けていないととても目を開けていられない。そしてほどなく避難小屋に着く。
ひと休みをして周辺の山々を望めば、通常の真夏には見られない雪山がとても美しい。


避難小屋

自然が描くシンメトリー

空の青さとあいまってバッハアルプゼーには美しい雪山が逆さマッターホルンのように湖面に映っている。まるでロールシャッハの心理テストのような図を見ているようだ。


コル手前よりバッハを望む

ファウルホルンを仰ぐ

夏なら高山植物が群生する湖畔をめぐり、ファウルホルンへの道を行く。ここからはさらに道がわからない。ちょっと道を外れるとひっくり返ってしまうほどもぐってしまい、足を引き抜くのに苦労する。
久しぶりにお天気になったからであろう、マーモットの足跡がたくさんついている。そしてしばらく見ているとどこからともなく雪の上に顔を出す。


バッハゼーを望む

岐路を標すコルの標識

コルまで登って振り返るとバッハアルプゼーが美しい。そしてその上にはシュレックホルン、フィンスターアールホルンなどが美しい姿を見せる。
また反対側を見上げればファウルホルンの頂上に小屋が小さく見える。ここまで来ればもう小屋まで30分くらいだ。
ブスアルプへ下る道も、シーニゲプラッテへ行く道も雪で真っ白。まだ誰も歩いていない。


とまどうトリカブト

ユングフラウ山塊

不意に大雪が降ったのでトリカブトが早すぎる冬の到来にとまどっているようである。バッハアルプゼーの隣にあるもうひとつの湖面にはユングフラウ山塊が投影してとても美しい。
道端に高山植物が群生する夏も美しいが、雪のバッハもそれに劣らず美しい。
厳しい冬を越し、また来年かわいらしい花を咲かせてくれることを心の中でそっとお願いし、帰路を急ぐ。

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