美佐子のスイスひとり旅   = No.7 =

= 中世の古き家を訪ねて =

ツェルネッツの駅前から朝一番のPTTバスに乗り、フオルン峠を越えてミュスタイアの谷の奥深くに入り込む。
この奥はもうイタリア国境という僻地で、訪ねる人も少ない。
しかしながら、780年に建てられたという聖ヨハネ修道院や中世の古めかしい建物、数百年前の家がそのまま保存されている村の中を歩いていると、いきなり馬に乗ったローマ軍の騎士達が現れ、あたりを闊歩していても全然不自然でないような、そんな中世の映画場面を思い出す。
本当に、いま一体自分はどこにいるんだろう、と一瞬錯覚を起こさせるほどの時空を超えたタイムトンネルの世界を満喫させてくれる。




フオルン峠を越えると最初に見えてくるのがチエルフの村である。小さな村であるが家々の壁には、美しいスグラフィートが描かれている。
バスはさらに進み、やがて次の集落・フルデーラの村を経由する。 時間が許せばここで下車し、ぜひリューの村を訪ねてみて欲しい。
バスで10分位だから無理すれば歩いても行ける距離だが、向かい側の山の上なので、行きはバスに乗り、帰りの下りを歩くようにした方が良いと思う。ただし、バス便は少ないので前もって時間を確認しておかないと、思わぬ時間のロスをしてしまうので気をつけて下さい。



・リューの村

フルデーラ村のバス停でリューへ行くバスに乗り換える。連結がうまくいっていないことから、待つこと30分。お客さんはほかに二人だけ。小型のバスが予定通りやってきて、運転手の女性がスイスヨーデル、イタリアカンツォーネ、オーストリアクラシックなど周辺3国に気を遣ったようなカーステレオをかけながら細い山道を登っていく。

バスは村の中心の教会前に停まるが、村と言っても本当に小さな村であり、端から端まで歩いても10分もかからない。村の入り口には、ヨーロッパで一番標高が高い村、という立て札が立っている。緑の牧草地と山々が大変美しい。


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フルデーラ村

フルデーラ村



リューの村



リューの村

小さなレストランが二軒ほどあるので、一休みしたらフルデーラ村へ向かって下り始めよう。歩いて1時間くらいかかるよ、とレストランのおばさんに言われたが、途中からバス通りを離れ、林の中をショートカットするハイキングコースを下れば、ゆっくり歩いても40分位で行ける。
そして、バス通りとは反対のフルデーラ村の入り口の方へ出るので、もう一度村中を歩いてゆっくり見ることができる。

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フルデーラ村のバス停



リューの村



リューの村



リューの村のバス停

ヨーロッパ一高い村


・ミュスタイアの村

フルデーラの村から再びバスに乗り、もう数百メートル先はイタリアという国境の村・ミュスタイアへ向かう。村の入り口の家にはキリストの十字架が掛けられている。国境近くには780年に建てられたという聖ヨハネ修道院があり、スイスというよりローマ時代のイタリアという雰囲気だ。今は博物館のようになっており、中を見学することができる。そして短冊のような紙に祈願し、マドンナ下に結び付けてくる。

遠くイタリアの山々に別れを告げ、サンタマリアへ向かって緩やかな登り道を歩き始めよう。遮るものがないギラギラした強い日差しの中を4~50分位歩くだろうか。やっとのことでサンタマリアの村外れにたどり着く。ここはやはり逆コースを歩いた方が楽だろう。





ミュスタイア村入り口

ミュスタイア

ミュスタイア



ミュスタイア


・サンタマリアの村

サンタマリアの村の入り口は車がやっと1台通れる位細い道である。向かって左手には水車の看板を立てたカフェ・フシーナがあり、右手には食事がおいしいと評判の瀟洒なレストラン「ピッツ・ウンブライール」がある。さらに細い道を少し入ると花がこぼれるように飾られたクルシュ・アルバというこれまた食事がおいしいホテルレストランがある。

また、カフェ・フシーナの隣には、「マイヤー」というパンの大変おいしいお店があるので、ぜひ立ち寄って見て欲しい。
この辺りのレストランはほとんど2時過ぎから6時半頃までお休みなので、昼食を目当てで行く時は時間に気をつけてくださいね。

そして、ミュスタイアの伝統芸術である松の木で作った木工細工や美しい織物を売っている店があるので、ぜひ立ち寄ってお土産に買って帰ろう。
木工細工店「RUDOLF HELLRIGL」、美しい織物店「Tessanda」





カフェ・フシーナ

サンタマリア村入り口

ホテル・クルシュアルバ

レストラン・ウンブライル



松の木細工屋

織物屋

織物機


・ヴァルチャヴァの村

元気が残っていたらサンタマリアの村から20分位なので、ぜひ歩いてヴァルチャヴァの村へ寄ってみよう。ここには数百年前に建てられた邸宅が改造されて、今はミュージアムとして保存されている。
中も見学できるが、開館時期や時間が決まっているので要注意。入場料として5フラン取られるが、十分それだけの見る価値はある。中には昔の家の家具、厨房器具、農具、機織りなどが展示されている。





チャサ・ヤウラ博物館

チャサ・ヤウラ博物館



チャサ・ヤウラ博物館



チャサ・ヤウラ博物館


文と写真 by K.Kojima