ベットマーアルプは背後に大アレッチ氷河を抱く標高2000Mの台地にある大変美しい町である。ツェルマットなどと同様に交通機関はかわいらしい電機自動車だけ、ここには忙しさも騒音もなく、のんびりと自然を満喫できる。ブリークから電車でアンデルマット方向へ行くとメレル、ベッテン、フィーシュという駅があるが、それぞれの駅からロープウェーがでており、10〜15分ぐらいで行くことができる。

氷河特急などでジュネーブ方面に向かえば右手の山の上に位置し、ツアー旅行などでは、ほとんどここに寄ることもなく通り過ぎてしまう町である。
リーダーアルプからベットマーアルプへは歩いて1時間ぐらいであり、道も舗装され、たまに電機自動車が通る程度なので散策するにはもってこいである。
この山の上には 電機自動車の乗合タクシーも通っている。またベットマーからキューボーデンへの道は未舗装であるが、大変歩きやすいので歩くのが苦手な人でも十分ハイキング気分を味わうことができる。

一番奥にあたるキューボーデンにはホテルは数軒しかないが、リーダーアルプとベットマーアルプにはたくさんのホテルがある。私は町中からはちょっと離れたリーダーアルプとベットマーアルプの中間くらいにある大変食事が美味しいホテルレストラン「アドラー」に泊り、縦横に整備されたハイキングコースを楽しむことにした。

左:ベットマーアルプにある教会。

右:ホテル「アドラー」前の牧草地。晴れていればマッターホルンが遠望できる。

電車の走っている谷間から1000メートルくらい上がったこの台地の上は、電機自動車以外の車の乗り入れが禁止されているので、大変静かである。昼間こそ大勢の避暑客やハイカーたちが行き交うが、夜も7時を過ぎたら、ほとんど歩いている人は見かけなくなる。 静かなのは結構だが、若い人たちが好むようなにぎやかな場所は余りない。だから逆にちょっと寂し過ぎてイやと言う人もいると思う。  

そのかわり週末には近所の教会で、ピアノやバイオリン、フルートなどのコンサートなどもやっており、たまにはこんな静かな場所でのんびりするのも良いだろう。 地元の人たちや避暑客はそんな日には、正装して、レストランで食事をしてコンサートを楽しんでいるようだ。

ホテルの前庭に咲く美しい花々。

右:愛称“エリンゴ”で知られるエリンギウム

左上の地図に記述した@のコースは、 ベットマーアルプの町はずれにあるリフトでシェーンビエルに上り、小さな湖の脇を通り、キューボーデンに向かう。そしてさらにそこからゴンドラでエッギスホルンに登り、山の向こう側を歩いて下り、再びベットマーに戻ってくるコースである。


ベットマーアルプからキューボーデンまで歩いて行っても良いが、帰りも同じ道を通るので、シェーンビエルを経由していく方が面白い。  時間的にも若干短縮できるし、なによりもリフトを降りてからキューボーデンへ向かう道は、ゆるい下りで歩きやすいうえ、景色は抜群、道の両側には美しい高山植物が群生するという大変のんびりしたハイキングコースである。
45分ぐらい歩くと前方にキューボーデンの村が見えてくる。小さな村で、ホテルは数軒、民家も数少ない。エッギスホルンへ上るゴンドラ駅は、村の奥の方にある。

左:Stachys byzantinaスタキス

右:エッギスホルンへのぼるゴンドラ

 

エッギスホルンの駅でゴンドラを降り、少し下ると右手にレストランがあるので、その前を横切り大きな岩がゴロゴロした急な山道を30分ほど登っていくと頂上である。 2〜3メートルもあるような大きな石を組み合わせて作った登山道なので、よくすべるし、ガスっている日などは道がよく分からなくなるので注意が必要だ。


左:レストランとエッギスホルン頂上

右:アレッチ氷河を見ながら歩く登山者

ただ、頂上がずっと前方に見えているので天気がよければ危険はないだろう。 今日は朝方からくもり、ここまでなんとか天気がもっていたが、ここへきてとうとう大きなヒョウが降ってきた。頭に当たると痛いくらいな大きなヒョウだ。真夏(8月初旬)だというのに、やはり高い山の天気は急変する。高い山に登るときは雨具は忘れないように。
霧雨が降ってきて、ガスも出てきた。これでは折角のアレッチ氷河も 良く見えない。 ここではいつも天気が悪い。 いつか青空の下に悠々と流れる氷河を写真に撮りたいと思っているのだが、なかなか果たせない。

左:エッギスホルン頂上

右:ラヌンクルス

やがて雨は大粒になり、フードに音を立てて当たるようになってきた。岩陰に隠れて小ぶりになるのを待つ。ふと足元を見ると、岩陰に黄色い美しいラヌンクルスが咲いている。2927メートルの頂上は15〜6人が立つと一杯になってしまうくらい狭い。頂上には写真のような十字架が立っている。晴れていれば素晴らしい景色だろうな、と残念に思うが、氷河の迫力だけは感じられる。よく見えないながらもしばらく360度の景色を堪能したら、今登ってきた道を戻り、レストランまで下ってゆこう。

左:カンパニュラ

右:エッギスホルン、キューボーデンの標識

 

ここのスープはおいしいのでぜひ立ち寄って冷え切った身体を温めるのもよいだろう。相変わらず強い雨が続いているので先を急ぐことにし、レストランの裏手からキューボーデンへ向けて下ることにする。 岩がゴロゴロした道をジグザグしながら道なりに下っていくと、やがて背丈の低い草地になり両側にはウサギギクやヴィオラが咲き乱れている。ハイキング道も岩場の道から歩きやすい道に変わり、余所見をしながらでも危なくない。キューボーデンへはかなり歩くが、標識もキチンと整っているので迷うことはないだろう。道なりに歩いていけば、やがて前方に民家と朝方乗ったゴンドラの駅が見えてくる。

左:ヴィオラ

右:ウサギギク

キューボーデンからは朝きた道を戻り、途中から下の道を通り、フーリーヒュッテを経由して、ベットマーアルプに戻る。時間があったらこの山小屋にはぜひ寄ってみよう。有名な登山家の写真がたくさん飾ってあるから。

コースタイム: ベットマーアルプ〜キューボーデン 1時間半  
         エッギスゴンドラ駅〜エッギス頂上 30分

         エッギス頂上〜レストラン 30分  レストラン〜キューボーデン 3時間 
         キューボーデン〜ベットマーアルプ  1時間半

注: 写真はビデオ画像を静止画として利用しているため画質が落ちています。ご了承ください。

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